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顎を広げるとは!?小児矯正の疑問にお答えします

こどもの矯正について相談を受けられた方であれば、顎をひろげる治療が必要と説明を受けたことがあるかもしれません。

あるいは、″子供の矯正は顎をひろげる″と何となく聞いたことがある方もいるでしょう。

『歯を並べたいだけなのに、顎を広げるの?』

『顎を広げるって痛くないの?大丈夫?』と心配される方が大半ではないでしょうか。

そんな疑問や心配事を今回の記事において解決していきます。

【目次】

  1. 顎を広げるとは!?小児矯正の疑問にお答えします
  2. 顎を広げるメカニズム
  3. 顎を広げることによる痛みは?効果は?
  4. まとめ

 

1、顎を広げるとは!?小児矯正の疑問にお答えします

そもそも歯並びは、簡単に言うと

『顎の大きさ』と『それぞれの歯の大きさと本数』によって決まるものです。

理論上は、

顎の大きさ)≒(それぞれの歯の幅の合計

になればきれいに並ぶ計算ですよね?(正確にはいろんな要素がありますので、≒としておきます)

①歯の幅

それぞれの歯の大きさと本数は生まれつき決まっており、歯を抜いたり削ったりしない限り変化させることができません。

②顎の大きさ

顎の成長量が少なく基準値よりも幅が狭い場合、矯正治療で『顎を拡げる治療』を行うことで成長の手助けをしてあげることができます。

つまり歯並びが悪いからといってむやみに顎を広げるわけではありません。レントゲン上の計測結果や歯の模型上での数値などを細かく分析し、標準値と比較した上でひろげる必要があるかどうかを判断します。

子供の場合、顎が成長段階であることから顎の土台自体の幅をコントロールすることができ、歯を並べるためのスペースを確保してあげることができます。

では、実際どのように顎を広げるかについて次の項で解説していきます。

 

2、顎を広げるメカニズム

顎を広げる治療は、主に上顎の骨に対して行います。上顎の骨は、上顎の真ん中にある正中口蓋縫合というつなぎ目を境に二つに分かれています。大人になると正中口蓋縫合は癒合しますが、こどもの間はまだくっついていません。

そこでこどもの間に装置を使い、このつなぎ目に力を加え離開させます。上顎の骨の土台を広げ、その隙間に新しく骨が作られることにより『顎を広げる』ことができます。

(期間)2週間  (装置)急速拡大装置   (リスク・副作用)特に装着時、違和感を伴う

実際に2週間の拡大を行った患者さんのお口の写真です。しっかりと正中口蓋縫合部が離開し、前歯の間に隙間ができています。この前歯の隙間は、新たな骨がこの隙間にできるに従って自然と閉じてきます。

①装置の構造

左右の奥歯(主に第一大臼歯)に金属の輪っか(バンド)を装着し、これと拡大ネジをろう付けします。お口の中ではろう付けできないため、型取りをして模型上で作ったものをお口の中に接着剤で装着します。

②拡大の方法

拡大ネジの真ん中に穴があり、その部分にねじ回しを差し込み手前から奥に向かって拡大を行います。拡大は1日2回、保護者の方に行っていただきます。拡大ネジを回すと一回で0.2 mm程度側方に広がるため、1日におおよそ0.4 mm拡大することができます。

これを2〜3週間ほど毎日行っていただき、ネジの種類にもよりますが最大で7〜12 mm拡大することができます。 拡大が終了した後は、正中口蓋縫合部にできた隙間に新しい骨ができ安定するまでおよそ3か月間装置をつけたまま過ごしていただきます。

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3、顎を広げることによる痛みは?効果は?

 

①顎を広げることによる痛みは?

他の装置と同様に装置を装着した日は違和感が少しあり、喋りづらい、食べ物を飲み込みにくいといったことがありますが、数日で慣れます。特にお子さんは適応能力がとても高く、大人が思っている以上に慣れるのが早く私たちも驚かされます。

また、ネジを回すと力が加わり骨が動くことで、鼻の奥がムズムズしたり違和感を覚えるお子さんもいらっしゃいますが、耐えられないほどの痛みを生じることは稀です。痛みが生じたとしても2〜3日で落ち着くでしょう。

②顎を広げることによる効果は?

  1. 上あごの成長発育をサポートし、顎の幅を広げることで上顎の土台自体の大きさをコントロールし骨格や歯列のアンバランスを改善できる
  2. 上顎の幅を広げることで永久歯の萌出スペースを獲得することができ、将来的な抜歯を回避できる可能性がある
  3. 上顎は鼻とくっついている(鼻上顎複合体)ため、空気の通り穴である鼻腔も広がり鼻呼吸がしやすくなる

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4、まとめ

『顎を広げる』治療に関して抱いておられる疑問は、少しでも解消できたでしょうか?

顎を広げるとだけ聞くとびっくりしますが、広げる理由を理解した上で実際の治療経過をご覧になると安心していただけたと思います。

また、装置をつけるに当たって多少の痛みや違和感を感じることもありますが、基本的には数日で消失することが多いですのでそれほど大きな負担にはならないでしょう。

『顎を広げる』という顔の骨格の矯正を無理せずに行うことができるのは児期特有であり、子供の矯正の一番のメリットです。

歯並びが悪いからといって、全ての子が顎を広げる必要はありません。しかし正確な診断のもと顎の拡大が必要と判断された場合は、この記事を思い出して安心して矯正治療を受けて頂ければと思っております。

 

監修者情報

2011年 徳島大学歯学部歯学科卒業

2016年 徳島大学大学院 口腔顎顔面矯正学分野 博士課程修了

2017年 日本矯正歯科学会認定医取得

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