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矯正のネジは痛い?必要な人は?【アンカースクリュー 】

近年ではアンカースクリュー という小さなネジを用いて矯正治療を行うことが多くなっています。では、小さなネジをどこにつけるかと言うと骨の中に埋め込み、それを固定源として使用します。

『え、想像するだけで痛そう・・・』

『怖いしやりたくない・・・』

実際にそう思われる方も多い印象を受けます。しかし、少しの麻酔だけで短時間ですぐにつけれてしまうのがこのネジの特徴です。思っているより痛くなかったという感想がほとんどで、いろんなことを可能にしてくれる非常に優れた装置です。

今回は、矯正治療に使用するネジ(アンカースクリュー )について解説していきます。

 

【目次】

1、矯正のネジは痛い?【アンカースクリュー】
2、メリットは?必要となる人は?
3、磨き方について
4、デメリットやトラブルは?
5、まとめ

 

1.矯正のネジは痛い?【アンカースクリュー】

アンカースクリュー とは、一般的に直径が約1.5mm、長さが約6mm〜8mmの非常に小さなネジで矯正力をかける際の固定源として使用するものです。非常に小さいスクリューを使用することから、ミニスクリューとも呼ばれています。

アンカースクリュー

矯正治療で使用されるアンカースクリューは、暫間的に骨内で使用されるものであり、取り外すことを前提として植立します。生体に影響がないようにチタン合金が使用されていて、生体にとっても親和性が高く安心です。

アンカースクリュー の模型

 

症例により植立する位置は異なりますが、上の写真のように歯茎の目立たない部位に植立します。

【痛みは?】

  • 骨に埋め込むと聞くと恐怖心が強くなりますが、少量の局所麻酔のみで済む処置ですので安心です。
  • 術後は痛みをほとんど感じない方が多い印象です。痛みを感じる場合は鎮痛薬で十分に緩和するレベルとお考えください。
  • また、役割を果たした後は撤去しますが、無麻酔かごく少量の局所麻酔にて行ないます。撤去後は痛みが出ることはほとんどなく、数日で歯茎が治癒します。

 

2.メリットは?必要となる人は?

アンカースクリュー を使用するにあたり、麻酔をしてまで処置を行うにはそれなりのメリットが存在するためです。では、アンカースクリュー の役割とメリットについてお伝えします。

【役割とメリット】

  • 骨に埋め込むため全く動かない固定源となる
  • かなり小さい装置で侵襲が少ない
  • 少量の局所麻酔のみで痛みが少ない
  • 処置は10分程度で終わり、患者様の負担が少ない
  • 症例によっては治療期間を短縮することが可能
  • 今までは難しかった方向への歯の移動が可能

歯列の矯正治療においてアンカースクリュー が使用できるようになってから、治療の計画幅が格段に上がり、より患者様の負担を少なく早く治療を終えることが可能となりました。

特にお口の中に動かない固定源を得るという点で非常に画期的な装置といえます。

 

【必要となる人】

代表的な適応となる歯並びをご紹介します。

・口ゴボ、出っ歯

横顔が気になる方に対して使用することが多く、その際には口元をしっかり引っ込める必要があります。

前歯を中心に後方へ大きく引っ張る際にアンカースクリュー が有効です。

矯正治療にて横顔が改善した女性のイラスト

 

・ガミースマイル

笑った時に上の歯茎が広い範囲見えることをガミースマイルと言います。改善するためには、唇を手術することもありますが、歯自体を上に位置付けする(歯の圧下)ことで歯列矯正にて改善することもできます。

上に大きく引っ張る力をかける際にアンカースクリュー は有効となります。

ガミースマイルが改善した女性の口元のイラスト

その他いろいろな状況、歯並びに応じてアンカースクリュー は適応となり、非常に大きな役割を果たします。必要かどうかは、歯科医師の判断となります。

 

3.磨き方について

普段は磨き慣れない場所に装置がつくため、どうしても汚れがたまりやすいもの。

アンカースクリュー のメインテナンスの方法についてお伝えします。

①植立当日〜約1週間

この期間は、まだ積極的に磨かなくても大丈夫です。歯ブラシ等を当てるとまだ痛むこともあります。

ブラシを当てても痛くなくなってきたら、ブラッシングを開始しましょう。

それまではうがいによりある程度汚れを落としておいて、そっとしておくだけで大丈夫です。

また、指や舌で触るのは控えるようにしましょう。

②約1週間後〜

アンカースクリュー の磨き方

歯ブラシを当てても痛くなくなってきたらブラッシングを開始します。使用するのは、毛先のやわらかいワンタフトブラシです。

毛先を小刻みに動かし、やさしい力でスクリュー上部と周囲を清掃してください。むやみに力をかけるとゴムが外れたり、アンカースクリュー 脱離の原因となりますので、鏡を見ながら表面をなでるようにやさしく磨くようにしてください。

詳しくは、当院が作製した動画をご覧いただくとわかりやすいかと思います。

【公式instagram/shigeta_dental_clinic】アンカースクリューの磨き方

 

4.デメリットやトラブルは?

いろんなメリットのあるアンカースクリュー ですが、当然デメリットやトラブルもあります。

ではみなさんにとって負担となる側面を見ていきましょう。

①小手術が必要

麻酔の量も少量で比較的短時間で終了する治療ですが、歯医者さんが怖い方にとっては非常にストレスのかかることです。

『麻酔自体がイヤ』『骨に埋めるなんて怖くてやりたくない』

こういった言葉はよく耳にします。感じ方はそれぞれですから、苦痛の度合いが強いようであれば無理をしてアンカースクリュー を使用する必要はないでしょう。担当医と相談して、違う歯列矯正の手段を検討しましょう。

 

②グラグラして痛い・外れた

元々外すことを前提として植立するわけですから、骨と結合するシステムはネジ自体にありません。”物理的な力で骨の中に存在し、それが炎症せず生体に受け入れられている”だけです。

脱落率は10〜30%程度あると言われ、骨の状態や環境により外れてしまうことがあります。その際には患者様と相談の上、違う場所に再植立することが多いです。当院ではもちろん無償で再植立させていただいています。

それでもやはり脱落してしまうケースもあり、その際はプランを変更します。アンカースクリュー を使用しないプランも事前にある程度想定をして矯正治療を開始しておりますのでご安心ください。

 

③腫れて痛い

アンカースクリュー の周囲の環境が悪く、汚れがたまったりすると炎症を起こして腫れてしまうことがあります。基本的にはよほど汚れがたまったりしない限りは炎症が強く出ることはありませんが、前項にご紹介した磨き方を参考にメインテナンスして頂くことをおすすめしています。

 

5.まとめ

アンカースクリュー についてご理解いただけましたか?

たくさんのメリットがありますが、どうしても施術が怖いという方にはおすすめできないというのが私たちの考えです。歯列矯正においてアンカースクリュー は治療プランの一つですので、別の方法にて矯正治療が可能となることも多いですので、そちらを選択するのも一つでしょう。

しかしアンカースクリュー 自体は非常に優れた装置であることは間違いありませんし、担当の矯正医よりアンカースクリュー の使用をすすめられた場合は、その方法が最善と判断したとのことですので、安心して使用してもらって良いと思います。

今後アンカースクリュー を使用して矯正治療を進められる方は、ぜひメインテナンス方法なども参考にしてくださいね。

監修者情報

2011年 徳島大学歯学部歯学科卒業

2016年 徳島大学大学院 口腔顎顔面矯正学分野 博士課程修了

2017年 日本矯正歯科学会認定医取得

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